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それから、さらに淵源をたどれば、合衆国憲法の制定者の一人であったジェームズ・マディソン、マーベリー対マディソン事件という意見審査立法のところで必ず出てくるマディソンの言葉ですけれども、「民衆が情報を持たず、またそれを獲得する手段のない民衆的政府というのは、喜劇の除幕か悲劇の除幕にすぎず、あるいはその双方かもしれない。知識は永久に無知を支配するであろう。そしてみずからが統治者であろうとする意欲を持っ人々は知識が与えるところの力を持ってみずからは武装しなければならない」。
余りにも皆様方にとっては当たり前過ぎることを申し上げたのは、翻って、このレジュメの1の我が国の制度の背景というものを考えると、国のレベル、地方のレベルを問わず情報公開法の推進によって力があったというか、それの起爆剤の一つになったものとして、相次ぐ薬害の悲劇があるわけでして、そして、きょうの午後のパネラーのお一人等も言っておられますけれども、民間のボランティア団体でFDA、アメリカの食品・医薬品局の情報をFOIA(フリーダム・オブ・インフォメーション・アクト)、つまりアメリカの情報公開法でとって医薬品、食品等についてはFDAというところが一番正確で早いから、ボランティアを組織して我が国の消費者等を守れるのではないかというご提案をなされて、実際、最近そういうボランティアもできたと伺っていますけれども、しかし、これを私が冒頭で申し上げた言葉に引き直してよく考え直してみますと、自国の国民の生命、身体の安全を守るのに他国の法律を使って、他の国の行政機関の情報を得ないと、またそれに頼らなければならない状態、もちろん技術的な理由で相互に参照すべきであるというものは別でございますけれども、そうでなくて、情報一般としてもし頼らなければならないというのでありますれば、それは恐らく、先ほどのマディソンの言葉ではありませんけれども、喜劇なのか悲劇なのかと言いたくなるような状況ではないかというふうに思います。
そこで、このような考え方を踏まえると、どうも国民に情報を与えて、情報を与えられた市民が行政あるいは政治等に参加する手段にするというのは、どうもアメリカのみならず、最近では他の国々にも広がりつつある。議員内閣制、いわゆるウェストミンスター制をとっているほかの国々でも見られる。ヨーロッパでもその透明化、トランスペアレンシーというのとオープンネス(公開)というのは大きなうねりとなっている。そこで、ひとりアメリカだけではなくて、どうもこれは情報公開法要綱案の中心的役割を果たされた塩野先生のお言葉ですけれども、情報公開というのは民主主義の標準装備なのではないかという気がするわけでございます。
しかし、先ほど既に理事長のごあいさつの中でありましたように、この制度というのは、

 

 

 

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